自動車前照灯 - OBF X
高輝度・高効率化により、自動車前照灯用のLEDをより低コストで実現
自動車用LEDは、数年前からハイエンド市場において、前照灯としての価値を証明してきました。21世紀初頭のヘッドランプ市場で主流であった従来のハロゲンランプに比べ、LEDは次のような特長を備えています。
- より高効率で、自動車の燃料や電気エネルギーの消費量を削減できる
- 寿命がずっと長く、ほぼ無限であるため、定期的なランプ交換が不要になり、ランプが故障したまま運転するリスクも低減できる
- ヘッドランプのデザインをより柔軟に差別化できる。自動車メーカーは、LEDヘッドランプを使用することで、自動車の個性やメーカーのブランドを反映した独自のスタイルを形成することが可能(図1参照)。
- プロジェクションレンズを用いたヘッドランプの設計で、より精密なビーム制御を実現
図1: 前照灯
効率、性能、設計自由度という価値は、高級車と同様に、ミッドレンジ~低価格帯の車両にも適用できます。しかし、システムコストが採用の障害となっています。従来のハロゲン前照灯には、長年にわたる規模の経済と低ユニットコストというメリットがあります。
しかし今、ams OSRAMの新しい超高効率車載用LED、OSLON® Black Flat Xシリーズの登場で、コストとパフォーマンスの閾値を超越したと言えます。この新しいLEDは、従来のOSLON Black Flat製品よりもさらに高レベルの光束出力と発光効率を実現しています。これにより自動車メーカーは、前照灯の材料や部品点数を大幅に削減することができ、LEDヘッドランプのコストは従来のハロゲンランプと同程度になるとともに、LEDテクノロジーが持つ優れた機能、信頼性、性能を提供することができます。
出力と発光効率の飛躍的向上
既存のOSLON Black Flatファミリー製品の成功基盤の上に構築されたOSLON Black Flat Xの登場により、LED前照灯の新時代が到来します。OSLON Black Flat LEDは、自動車前照灯に使用される初の表面実装型LED光源として広く知られています。OSLON Black Flatの名前は、黒いパッケージで1:200の高コントラストを実現し、フラットな表面実装パッケージにより標準的なアセンブリ装置でプリント基板に実装できることに由来しています。
新しいOSLON Black Flat Xは、ams OSRAM InGaNベースのUX3チップアーキテクチャの最新バージョンをベースとしています。UX3は、優れた信頼性、高い光出力、良好な熱性能を備えています。
このプラットフォームをベースとしたOSLON Black Flat Xは、1チップあたりの発光面積が1.15mm²と広く、他の競合する車載用LEDに使用されているセラミックパッケージよりも熱抵抗が低いなど、さまざまな改善が施されています。さらに、この新製品は、角度による色の均一性にも優れています。
これらの新機能により、優れた動作特性を実現しています。OSLON Black Flat Xシリーズの各チップは、駆動電流1Aで460 lmという輝度を提供します。OSLON Black Flat Xシリーズのバリエーションの1つであるシングルチップのKW HHL631.TKでは、460 lmの光束で消費電力はわずか3.2Wとなっており、より高い光束出力と発光効率の組み合わせを実現しています。
OSLON Black Flat Xは、1チップ、2チップ、3チップ、4チップ、5チップのバリエーションがあり、いずれも小さな表面実装パッケージに収められています。例えば、シングルチップのOSLON Black Flat Xは、わずか3.75mm×3.75mmの黒いフラットパッケージで提供されます(図2参照)。OSLON Black Flatは、パッケージの優れた熱性能を生かし、Alメタルコア基板(MCPCB)との高い親和性を備えています。5チップまでのすべてのバージョンにおいて、LEDの金属リードフレームとMCPCBの熱膨張率が緊密に一致しているため、LED基板アセンブリ全体の信頼性は非常に優れています。また、各チップは個別にアドレス指定が可能なため、自動車の起動-停止機能が作動したときのバッテリー電圧低下を考慮して、LED出力を動的に調整することができます。
図2: OSLON Black Flat Xシリーズのシングルチップバージョン
高出力化でシステムコスト削減を実現
新しいOSLON Black Flat Xの高輝度は、自動車メーカーが価格性能比の関係を変えるために役立ちます。より少ないチップで目標光束値を達成できるようになるため、前照灯システムの材料費を削減できます。このコストメリットは、表面実装型OSLON Black Flat Xの高い発光効率と低い熱抵抗によってさらに強化されます。メーカーは、LEDが実装されているメタルコア基板(MCPCB)による放熱のみに依存した、ヒートシンク不要の前照灯ユニット設計を実現することが可能になります。この新しい可能性は、OSLON Black Flat X LEDをデイライト(DRL)、ロービームおよびハイビームのヘッドランプに使用して、ams OSRAMにより開発されたリファレンスデザインによって実証されています(図3参照)。このリファレンスデザインはリフレクタベースのヘッドランプですが、同じヒートシンク不要のアプローチは、プロジェクションレンズベースの設計にも同様に導入可能です。
図3: ヒートシンク不要のリフレクタベース前照灯ユニットのリファレンスデザイン。
このリファレンスデザインで、ロービームヘッドライトは、2つのデュアルチップOSLON Black Flat X LEDで実現されており、それぞれが独自のリフレクタ付きアルミニウムMCPCBに実装されています。ハイビームヘッドライトは、1つのデュアルチップOSLON Black Flat X LEDとリフレクタを備えています。DRLは、1つのシングルチップOSLON Black Flat X LEDとリフレクタで実現されています。
また、設計にはターンインジケータも含まれており、完全な前照灯ユニットとなっています。700mAで駆動するOSLON Black Flat X LEDは、ヒートシンクやファンを必要とすることなく、MCPCB経由で空気中に熱を放散させます。総放熱量は9.65Wです。このシステムは、筐体外部の温度が70℃を超える環境下で動作させても、安全に動作温度上限内に収まります。
ヘッドライトとDRLの光出力は、自動車照明規格に準拠しており、ジャンクション温度150℃、駆動電流700mAで、OSLON Black Flat Xチップ1個あたり270 lmを生成することができます。この条件で、消費電力は2.0W、熱出力の放散は1.15Wとなります。この前照灯ユニットの熱性能は、図4に示すとおりです。
図4: OSLON Black Flat Xベースのリファレンスデザインにおける前照灯ユニットのヒートマップ。ヒートシンクやファンを使用しなくても、LEDの温度は許容範囲内に安全に保たれます。
OSLON Black Flat X LEDを使用した前照灯は、ヒートシンクや強制空冷が不要であるため、以下のような重要なメリットがあります。
- 部品表からヒートシンクアセンブリを排除できるため、システムコストの削減が可能
- 軽量化
- 省スペース化
また、駆動電流が700mAと低いため、駆動部品の定格電力を低くでき、単価を低く設定することができます。OSLON Black Flat X LEDは、AEC-Q102認定、クラス3Bの耐腐食性、PPAP準拠など、自動車生産規格の全要件を満たしています。
ヘッドランプにおけるLED採用を拡大する新たなチャンス
OSLON Black Flat Xシリーズの導入により、自動車照明メーカーは、LEDテクノロジーの主な利点である長寿命、高効率、信頼性を享受しながら、システムコストを従来のハロゲンベースの設計と同程度に抑えた前照灯ユニットの新設計が可能になります。
OSLON Black Flat Xで、ヒートシンクを排除し、熱設計を簡素化することができ、コスト面で競争力を備えた高性能・高信頼性の新世代のLED前照灯ユニットを実現することができます。