マイクロLED:ヘッドランプからデータセンターまで

新しい光インターコネクト技術でデータセンターの帯域幅、効率、信頼性を向上

マイクロLED:ヘッドランプからデータセンターまで

AIテクノロジーの進化を考えるとき、機械学習や大規模言語モデルの発展に加えて、最新のGPUや高帯域幅メモリ(HBM)、そしてチップレットやヘテロジニアスインテグレーションなどの高度な半導体テクノロジーも思い浮かびます。

しかし、自動車のヘッドランプはどうでしょうか。

自動車照明は通常、AIの次なる目玉になるインスピレーションとは見なされません。しかし興味深いことに、ハイテクを駆使した「配光可変型」前照灯は、価値の高い光接続技術の信頼性と拡張性を証明しており、この光接続技術は、データセンター事業者がネットワーク帯域幅、効率、信頼性の向上という今日の課題に対処するために役立つ可能性があります。

とはいえ、ここで一歩退いて、ヘッドランプがAIデータセンターの技術にどのように関連しているのかを説明します。

データ転送のボトルネック

AIの需要がトレーニングと推論の両方で急増しており、機器メーカーにはシステムのコンピューティング能力向上の大きな圧力がかかっています。現在の主なボトルネックは、AIデータの入力を驚異的な速さで処理する高性能なアクセラレータ(GPUやNPUなどの「xPU」デバイス)のおかげで、実際のところコンピューティング機能にはありません。問題は、xPU間、xPUとメモリ間、ラック内のサーバー間でデータを転送できる速度です。

従来の銅線による電気的相互接続は、よくある安価なものであり、電気回路への組み込みが容易ですが、拡張性が低く、AIコンピューティングシステムのスケールアップに必要な距離(最大30メートルに及ぶことさえある)にわたる銅線の相互接続には、電磁干渉(EMI)の問題を克服するためにも、より高い送信エネルギー、より強力なイコライゼーション、そしてより複雑な信号処理が必要となります。このため、銅線による接続はより多くの電力を消費し、より多くの熱を生み出します。これが帯域幅密度(Gbits/s/mm)とシステムの効率、信頼性の向上に向けた機器メーカーの努力を無効化しています。

そういった中で、ネットワーク帯域幅を増加するために、データセンターは光インターコネクト技術に頼るようになりました。そのために、インターネットの基幹企業からテクノロジーを取り入れました。これらの企業は、限られた数の海底ケーブル(敷設と保守が非常に困難で高額である)を介して大陸間でインターネットトラフィックを転送するために、ケーブルあたりのスループットを最大化する技術を習得しています。今日の大陸間光伝送ネットワークでは、レーンあたり毎秒最大1.6テラビットという高速で動作するリンクが運用されています。

これは、帯域幅を最大化するための「高速で狭い」アプローチであり、できるだけ多くのデータをできるだけ高速で各光学「パイプ」に送り込みます。しかし、こういった高周波システムは複雑で、電力消費量が多く、高コストです。加えて、各リンクが非常に重要な単一障害点であり、システムの可用性に高いリスクをもたらします。また、レーンあたりの速度とスループットがさらに高まるにつれ、実装が指数関数的に困難で高コストになるため、この「高速で狭い」アーキテクチャをどこまで拡張できるかは不透明です。

インターネットインフラストラクチャでは、ケーブル配線のコストが高い場合、通信事業者はケーブルあたりのデータスループットを最大化するしかありません。しかし、データセンターにこの制約はありません。

単一の光チャネルから数千へ

データセンターの世界で新しいアプローチへの関心が高まっているのはこれが理由です。「高速で狭い」のではなく、「低速で広い」ほうを選べるとしたらどうでしょうか。これは、単一の超高速リンクを数百あるいは数千のより低速な並列光チャネルで置き換え、よりシンプルで安価な低速のコンポーネントを使用して、総帯域幅を増やすことを意味します。

このようなシステムにおいて、データ送信機はインターネットインフラストラクチャで使用される単一の高出力レーザー光源を数百のマイクロLEDで置き換えることができます。データ通信機器メーカーはこれまで、数百あるいは数千のマイクロLED送信機を使用した並列光チャネルを組み立てたことがないため、この「低速で広い」という概念はデータセンターで実証されていません。

「低速で広い」アーキテクチャに必要なのは、サーバーのデータ処理装置とデータストレージコンポーネントのすぐ近くに数百の光エミッタを配置する能力です。また、AIの需要は決して衰えないため、データセンター事業者はこれらの小型エミッタで信頼性に優れた年中無休の運用をサポートする必要があります。しかし、数千のマイクロLEDによるチップスケールアレイの実装は、要求の厳しい自動車市場ですでに検証されています。この点において、自動車のヘッドランプはデータセンター機器メーカーにインスピレーションを与えることができます。

ams OSRAMの配光可変型ヘッドライト向けEVIYOS™光源で使用されているマイクロLEDテクノロジーで示されているのは、まさにこれらの機能です。

図1:EVIYOS製品で、ams OSRAMはマイクロLEDアレイとドライバ回路を1つのコンパクトなパッケージに組み込んでいます。

1つのEVIYOSチップに25,600個のマイクロLEDが含まれており、それぞれが人間の髪の毛の半分ほどの大きさで、わずか22.0mm x 17.5mmの単一パッケージでCMOSドライバチップと統合されています。25,600「ピクセル」のそれぞれが個別制御可能であるため、ヘッドランプは路面に複雑なパターンを投影できます。そのマイクロLEDとCMOSドライバ間を統合する独自の技術が、「デジタルライト」として“ドイツ未来賞”を受賞し、それをベースとした製品は現在の量産車において信頼性と堅牢性が実証されています。

そして今、同じ技術がAIデータセンターの超高帯域幅光インターコネクトに合わせて使用されています。

実証済みのマイクロエミッタ技術

光インターコネクトで使用する場合も、ヘッドランプと類似した製造技術が使用されますが、ヘッドランプではマイクロLEDが高密度のモノリシックアレイで構成される一方で、データ接続ではマイクロLEDがダイシングされ(それらが製造されるウェハから切り出され)て基板上に取り付けられ、各エミッタをそれぞれ専用の光ファイバーケーブルまたは導波管に接続可能にします。その後、この基板をターゲットのCMOSウェハ上にアセンブリすることができます。

図2:高速光リンクにおけるマイクロLEDの製造を実現 

マイクロLEDは非常に小さいため、それらをベースとしたデータ通信トランシーバは非常に高い帯域幅密度を達成できます。ams OSRAMの社内研究によると、マイクロLEDエミッタは、10mのリンク全体で非常に低いエネルギーレベル(2pJ/ビット未満)でレーンあたりのデータ速度3.0 Gbits/sを達成することができ、同時にビット誤り率10⁻¹⁵(BER)未満の業界標準仕様を満たすことが示されています。

また、単一の超高速回線を数百の並列接続で置き換えることで、AI機器メーカーは、データセンターアプリケーションで有益なその他の利点を手にすることができます。

  • 信頼性 - マイクロLEDは複数の冗長チャネルを備えたシステムで構成することができます。つまり、1つのエミッタに不具合が生じてもグレースフルに故障に対応し、予備のチャネルで置き換えることができます。
  • 効率 –「低速で広い」アーキテクチャにおいて、各エミッタは比較的低いスイッチング周波数(通常は約 1GHz)で動作するため、インターネットインフラストラクチャの超高周波レーザー送信機よりも消費電力が抑えられます。低消費電力によって廃熱の発生も減少し、機器メーカーにサーマルバジェットの余裕を与えることができます。
  • 簡素化 –「高速で狭い」アーキテクチャでは、AIアクセラレータでのデータ処理の並列ストリームを伝送のためにシリアル化し、受信後に逆シリアル化する必要があります。ams OSRAMのマイクロLEDをベースとした「低速で広い」アーキテクチャは本質的に並列であるため、複雑でコストのかかるシリアル化の必要性がなくなります。

データ通信業界とのパートナーシップ

ams OSRAMは、ヨーロッパで唯一マイクロLEDを量産しているメーカーです。その生産能力は実証済みで、2023年以来、自動車業界にEVIYOS製品を大量出荷しています。

現在、ams OSRAMは、データセンター機器メーカーと連携し、例えば、高周波データ送信機に適したドライバ回路の統合や、パッケージ設計の最適化、市販の光コネクタやケーブル、ファイバー製品との相互運用性確保など、この技術を光インターコネクトでの使用向けに適応させる準備が整っています。

この開発の取り組みにおいて、ams OSRAMはその幅広い光学システムの能力でメーカーを支援します。ams OSRAMは、フォトダイオード(光受信機)に加えてマイクロLEDも製造しているため、完全に統合された光学データ転送システムの製造において中心的な役割を果たすことができます。

図3:フォトダイオード受信機を備えたマイクロLEDアレイとAIデータセンター向け高帯域幅データ転送ソリューションの統合コンセプト

マイクロLEDと光インターコネクトを統合するための初期概念設計はすでに利用可能です。詳細情報やams OSRAMとの共創の機会については、お気軽にお問い合わせください。

\n