今日、果実の熟度を調べる機器は、高価であったり、無駄が発生したりします。ams OSRAMが開発した新技術は、高性能でポータブルな装置を手頃な価格で提供します。
海や大陸を越えて出荷された果物が、熟した状態でスーパーマーケットに並ぶように収穫のタイミングを計ることは、農業において最も困難な問題の1つです。
現在、生産者は専用の検査機器を使用して熟度を測定していますが、これらの機器はかさばって重く、価格も数千ドルに達することがあります。市場では、大規模な生産者だけでなく小規模な生産者でも購入可能で、畑や果樹園で手軽に使用できる、より小型で安価なソリューションが求められています。
最近、ams OSRAMは、近赤外線(NIR)分光法を使用して果物やその他作物の糖分や乾物含量を測定するデモシステムを開発しました。世界トップレベルのセンサとLEDの技術をベースとしたams OSRAMのソリューションは、100ドル以下で購入でき、どこにでも持ち運んで導入できる検査装置の基礎となる可能せいがあります。
今日の果実熟度検査:高価で破壊的
果物の生産者にとって問題となるのは、キウイとアボカドを例に挙げると、これらの果物が消費者に届くまでの輸送距離の長さです。生産者は、スーパーマーケットの棚に並ぶまでに熟すための十分な時間が与えられるように、適度に未熟な状態で収穫する必要があります。
熟度を測定するために、生産者は果実の糖度(BRIX)と乾物含量(DMC)を測定します。現在、果樹園や果物流通センターでBRIXとDMCを測定するために最も一般的に使用されている技術は、高価であるか、無駄が発生するものです。多くの生産者は、低価格の屈折計を使用しています。この装置を使うには、果物を切って開き、果汁を測定します。この商品は廃棄され、販売することはできません。
NIR分光法器は、このような廃棄物を出さない代替方法です。NIR分光器では、広帯域のNIRエミッタが果物の表面を照らします。キウイ、アボカド、トマトなど、各オブジェクトはそれぞれ異なる方法で波長スペクトルを反射または吸収し、固有の光学的特徴を形成します。これを分光器で捉え、アプリケーション専用のソフトウェアで分析します。
屈折計を使用した場合とは異なり、NIR分光法は果物を破壊しません。しかし現在、分光法に使用されている製品は、ポータブルまたはラボグレードの分光計で、通常1,000ドル以上の価格です。つまり、現在BRIXとDMCの測定器は、大規模な果樹園や施設であっても導入数が少なく、多くの中小規模の家族経営農場では全く導入されていません。そのため、ほとんどの果物が検査されず、検査された果物は消費者に届きません。
このように、限られた数の果物しか検査されないため、サプライチェーンは果物の熟度に関する不完全な情報に基づいて運営されています。これでは、果物の全体的価値が下がってしまい、また一部の果物は小売店に届く前に熟してしまい、通常は廃棄されてしまうため、持続可能性の問題も生じます。
チップスケールスペクトルセンシングのブレークスルー
今回、ams OSRAMは、果物検査用の優れたNIR分光器のデモデザインを開発しました。この開発には、旧オスラム オプトセミコンダクターズとamsの光センサ事業部の分光分野における長年の協力関係が生かされています。新設計では、従来の分光器に搭載されていたレガシー技術を先進的な光半導体:広帯域のNIRエミッタOslon P1616 SFH4737と、64チャンネルNIR分光器ICに置き換えており、サイズはわずか6.6mm x 6.0mm x 2.2mmとなっています。これは、ams OSRAMのシステムが小型・軽量で持ち運びに便利であり、市販の果実検査製品の価格が日常的なユーザーが購入できる価格になることを意味しています。
ams OSRAMの果実熟度検査機プロトタイプ
この革新的な設計は、現在市販されている信頼性の高いNIR分光器と同等の性能を維持しながら、大幅なコスト削減を実現します。正確なNIR分光法には、広帯域のNIRエミッタと、異なる波長のNIR光を正確に識別するセンサが必要です。Oslon P1616 SFH 4737エミッタは、650~1050nmの広い波長範囲を持ち、歪んだピークや谷のないフラットな出力分布を有します。わずか1.6mm x 1.6mm x 0.9mmという世界最小の分光用NIREDであり、750~1050nmの波長域で高い感度と選択性を提供するスペクトルセンサの理想的なパートナーでもあります。
センサのスペクトル測定値は、専用の化学分析モデルで後処理され、BRIXとDMCの値を生成します。以下のグラフは、ams OSRAMのデモシステムで、数千ドルの参考機器と同等の測定結果が得られることを示しています。
現在生産者が使用している検査装置の測定値(上)と、ams OSRAMの実証機の測定値(下)。ams OSRAMのシステムが同等の精度を達成していることがわかる
リアルタイムの熟度追跡
低コストで高性能なams OSRAMのシステムは、生産者、流通業者、小売業者がサプライチェーンのあらゆる段階で熟度検査を行うことができる新しい未来を切り開きます。いつか、スマートフォンに組み込まれたNIR分光器で、消費者が棚に並んだ農産物を選ぶ前に、その熟度や栄養成分を測定できるようになる日が来るかもしれません。
ams OSRAMのビジョンは、果実の熟度を測定するスペクトル検査が非常に安価になり、複数の検査装置を1,000m2に1台の割合で果樹園に密に設置できるようになり、1つの果樹園の中でも異なるレベルの日照量や水分量、気温に晒された作物の熟度データをリアルタイムに提供できるようになることです。
正確な熟度検査が普及すれば、生産者や荷主が果物の収穫や出荷を微調整できるようになり、より多くの農産物が最適な状態でスーパーの棚に並ぶようになります。これにより、食品廃棄物が大幅に削減され、生産者や市場関係者にとっての果物の価値が高まります。
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