ロボットや無人搬送車を使用した産業用アプリケーションでは、赤外光とそれに対応したセンサの相互作用が不可欠です。世界を3Dでキャプチャするために、システムメーカーはさまざまなアプローチを選択することができます。

モビリティは急激に変化しています。自律型モビリティソリューションを開発する自動車分野においても、ロボットや無人搬送車を使用する産業用アプリケーションにおいても同様です。システム全体には多様なコンポーネントがありますが、それらはお互いに適合し、補完し合う必要があります。その主な目的は、車両の直接的周辺環境のシームレスな3Dビューを作成することです。このマップは、物体までの距離を計算し、特別なアルゴリズムを用いて車両の次のアクションを開始するために必要です。そして、ここには3つのセンサ技術が集約されています。LiDAR(光による検知と測距),、レーダー、カメラです。状況に応じて、それぞれにメリットがあります。これらのメリットと冗長性のあるデータを組み合わせることで、安全性が大幅に向上されます。データの連携がうまくいけばいくほど、自動運転車が環境内でうまく動作します。


 

ダイレクトタイムオブフライト(dToF)

タイムオブフライトのアプローチにおいて、システムメーカーは光の速度を利用して奥行き情報を生成します。簡単に説明すると、光のパルスを環境に向けて照射します。その光が物体に当たると反射し、光源の近くに設置された検出器に登録されます。光線が物体に到達して戻ってくるまでの時間を測定することで、物体の距離(この場合は1ピクセルの距離)を判定することができます。受信した信号は最終的に処理され、人や障害物との衝突を回避するための車両の回避行動など、対応するアクションをトリガーします。このアプローチは、光線の正確な「飛行時間」が関係することから、ダイレクトタイムオブフライト(dToF)と呼ばれています。典型的なdToFアプリケーションの例として、自律走行車用のLiDARシステムがあります。

 

インダイレクトタイムオブフライト(iToF)

インダイレクトタイムオブフライト(iToF)のアプローチも似ていますが、大きな違いが1つあります。光源(通常は赤外線VCSEL)からの照明は拡散板によって拡大され、定義された視野内にパルス状(50%デューティサイクル)に照射されます。

下流のシステムでは、光が障害物に当たらない場合、一定時間内に検出器を作動させる「標準信号」が保存されています。この標準信号が物体によって妨げられた場合、システムは、結果として生じる位相差とパルス列の時間遅延により、検出器の定義されたピクセルごとに奥行き情報を判定することができます。

 

アクティブステレオビジョン(ASV)

「アクティブステレオビジョン」アプローチでは、赤外線光源(通常はVCSELまたはIRED)が環境にパターンを照射し、2台の赤外線カメラがその画像をステレオで記録します。

 

この2つの画像を比較することで、下流のソフトウェアは必要な奥行き情報を計算することができます。光源は、対象物が壁や床、テーブルなどのテクスチャがほとんどない場合でも、パターンを投影して奥行き計算をサポートします。このアプローチは、障害物を回避するためのロボットや無人搬送車(AGV)における近距離・高解像度の3Dセンシングに最適です。また、生産ライン部品の光学検査や、防犯カメラ、監視カメラなどにも適用できます。ams OSRAM は、近赤外光源で高コントラストのドットパターン照明を提供するドットプロジェクタのポートフォリオを有しており、太陽光の影響を受けないシステムを実現しています。アクティブステレオビジョンのシステム設計は比較的シンプルであるため、システムコスト全体にプラスの効果をもたらします。しかしこのアプローチでは、システムに関連するカメラの分離に応じて、比較的大きな設置スペースが必要となります。

工業生産や物流で自動化が進む中、それに対応する技術の必要性も高まっています。それぞれの技術的アプローチや最終的なアプリケーションに応じて、どのような光源がより適しているかが異なります。 
LiDARでは、3D点群を取得するために2つの異なるメインシステムが使用されます。フラッシュ型LiDARとスキャン型LiDARです。スキャン型LiDARシステムでは、集光されたパルスレーザービームを、機械的な回転ミラーまたは微小電気機械システム(MEMS、Micro Electro-Mechanical System)ミラーにより、特定の小さな立体角に向けて照射します。
 

 

 

高出力のパルスレーザービームは、小さな立体角にのみ照射されるように制御されているため、3Dフラッシュ型システムと比較して、使用される光の出力で到達可能な距離がはるかに大きくなります。EELは、これらシステムアーキテクチャに最適な製品です。コンパクトなスペースで、小さな発光面積により大量の光を照射することができるため、優れた出力と範囲を実現します。このため、EELはさまざまなソリューションで使用できます。ams OSRAMは15年以上にわたりLiDARレーザーのトップメーカーとして、1,000万個以上のチップを出荷しており、また1つのチップ不良もありません。半導体のエキスパートである同社は、今日のLiDARシステムで一般的な波長905ナノメートルを確立しました。他の波長のシステムと比較して、905ナノメートルのソリューションは、優れたシステム効率、完璧な信頼性、魅力的なシステムコストを特徴としています。

 

LiDARに関連して、最近新しい照明技術であるVCSEL(垂直共振器面発光レーザ)が話題になる場面が増えています。VCSELは、2つの照明技術の特性、つまり赤外線LEDの高い出力密度とシンプルなパッケージ、レーザーのスペクトル幅と速度を兼ね備えています。優れたビーム品質、シンプルな設計、さらなる小型化などのメリットが、VCSEL市場の成長を物語っています。一般的に、EELエミッタに比べて設置スペースが必要になる場合がありますが、特定のアプリケーションではメリットがあります。例えば、その放射特性からフラッシュ型LiDARシステムに特に適しており、またロボティクスや自律型移動ロボットなどの産業用アプリケーションにも適しています。3Dフラッシュ型LiDARでは、1回の発射で対象となる立体角全体にパルスレーザービームを照射します。点群の特定の解像度を得るためには、受光素子のn x mアレイ(受光素子アレイまたはCMOS ToFチップ)が必要です。

 

ams OSRAMは、赤外線LED、VCSEL、EELなど、非常に幅広いポートフォリオを有しており、お客様がどのようなシステムアプローチを好むかを問わず、すべての一般的なアプローチに対応することができます。ams OSRAMは、LiDAR用のVCSELとEELの提供における世界的なリーダーです。いずれの製品も、光学性能と効率の両方において優れています。また、エッジエミッターのパッケージ設計はピーク出力120Wで、TO-Can、プラスチック、SMTパッケージなど、お客様のシステムに最適なものをお選びいただけます。VCSELの分野では、幅広い波長(680~940ナノメートル)、出力クラス(7mW~60W以上)、視野(Field-Of-View)の製品を提供しています。コンパクトなサイズに加え、優れた堅牢性と最先端のVCSEL技術を特徴としており、幅広いアプリケーションに対応しています。